(書 名) | 失われた〈私〉をもとめて |
(副 題) | 症例ミス・ビーチャムの多重人格 |
(著 者) | モートン・プリンス |
(訳 者) | 児玉憲典 |
著名な精神科医による 多重人格に関する古典的な記録 序文 戸川行男 |
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1994. 12 学樹書院 ISBN4-906502-01-6 C0097 A5並製/580頁/定価¥4200+税 |
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目次(概要) | 本書について | 著者について | 書評・その他 |
概 要 |
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●ところが、翌年の6月、今度はビーチャムでもサリーでもない第三の人格が登場してくる。この女性は、情感豊かで確固とした主張をもつ一見非常に健康的な人格をもっているようにみえる。著者は、この女性の個性を知って、自分のところに治療をもとめてやってきたビーチャムはじつは本物ではなく、この第三の女性こそが真のビーチャムだったのではないか、と考えはじめる。著者は悩み、悪戦苦闘する。学者としての著者の苦悩をよそに、三つの人格は一つの身体を奪いあう。……。 |
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真の〈私〉をもとめるビーチャムの不思議な旅路と、第一級の精神科医による多重人格 − 世紀末に贈る異色の1冊。 |
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「この本は私にとってなにやら一生涯の課題となった思い出の本である。・・・ 私は十八年ほど前に私の『自我心理学』の冒頭にビーチャムのこの症例をあげ、これを、われわれ人間の自我とは何かという問題の出発点とした。現代の心理学は自我という問題を扱わない。大学の一般教育科目の心理学の講義には自我という言葉が見られないかもしれない。精神分析は上位自我と自我と無意識について語るが、知りたいのはそれら全部を含めての「自分」、「私」である。そしてこの「私」の分裂ということが、この本を買って60年以上にもなる今もって、そしてまた自我についてあれこれと論じてみた今でも、私にはわからないのである。プリンス教授は催眠術で、複数のビーチャムを単数のビーチャムに統合しようとするのであるが、この催眠現象というものにも私にはその満足な解説を行うことができない。それであるから私としてはこの本の問題を半世紀もかかえこんで墓の中まで持ってゆくことになりそうなのであるが、ともかくそれだけ私を自我問題に引きつけた振り出しがこのビーチャムの症例であることはまちがいない。このたび児玉憲典君がこの本を翻訳したということを聞いて、一番嬉しがったのは、私ではないかと思うのである。」 戸 川 行 男
モートン・プリンス(Morton Prince, 1854-1929) 1854年ボストンに生まれる。ハーバード大学医学部卒業後、神経科医として活躍しつつ、シャルコー、ベルネーム、ジャネらの影響を受け、睡眠、ヒステリー、多重人格など、異常心理学の諸問題について研究。1906年創刊の「異常心理学雑誌」の編集に参与するほか、米国精神病理学会を創設するなど、アメリカの異常心理学界で指導的な役割を果たした。著書に『人格に関する臨床的・実験的研究』『無意識』など。 児玉憲典(こだま・けんすけ) |
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「精神科臨床のための必読100文献―鈴木茂」(こころの臨床アラカルト増号03年5月より) |
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