(書 名) 精神論証そのもの
(副 題)  ― デカルト、ホッブズ、スピノザ ―
(編著者) 上野 修 *
(訳 者)  

デカルトはどう乗り越えられたのか
ホッブズは近代に何をもたらしたのか
構造主義者たちはなぜスピノザに傾倒したのか

若き俊英による大胆なスピノザ主義の解読
《「スピノザ・ルネサンス」の頂点に位置》

1999. 3   学樹書院

ISBN4-906502-09-1 C1010

A5変型/256頁/税込定価¥3675(本体¥3500)

  目次 本書について 著者について 書評・その他

目 次 
ものを言う首 ― 序にかえて (デカルト、ホッブズ、スピノザをつなぐもの)
第1章 残りの者 ― あるいはホッブズ契約説のパラドックスとスピノザ
第2章 意志・徴そして事後 ― ホッブズの意志論
第3章 スピノザと敬虔の文法 ― 神学と哲学の分離と一致
第4章 スピノザの聖書解釈 ― 『神学政治論』の「普遍的信仰の教儀をめぐって
弟5章 われらに似たるもの ― スピノザによる想像的自我およびその分身と欲望
第6章 精神の眼は論証そのもの ― スピノザ『エチカ』における享楽と論証
第7章 デカルトにおける物体の概念
第8章 無数に異なる同じもの ― スピノザの実体論
第9章 スピノザの今日、声の彼方へ


本書について(カバー宣伝文)
デカルト、ホッブズ、スピノザ ― 17世紀の哲学史においてそれぞれにエポックメイキングな役割を果たした哲学者たち。かれらの哲学体系は、一般に≪われ思うゆえに、われあり≫、≪可滅の神リヴァイアサン≫、≪神即自然≫の思想として知られている。 しかし、「哲学思想には、ちょうど円が接線をもつように、思考がその周縁部分でたえずそれに触れ、それとの緊張によって自らの中心を支えているような、そういう外に属する何かが、別に必ずあるものだ」と考える著者は、この3人の哲学者が共有する機械論的な世界観に着眼しつつ、それぞれの思想の根底にあるものに迫ろうとする。著者によれば、かれらの機械論とは、合理主義という名から想像される以上の不気味な「存在論的機械論」、すなわち「機械的な存在が自生し、算出し、ものを言う……前代未聞の存在の概念」を称揚する立場にほかならなかった。心身分離と心身合一、あるいは自由と必然という相反する立場を物体の概念において包みこもうとしたデカルト、物理的な「しるし」によって制御されるシステムを基盤に「人はなぜ人に服従するのか」と問いつづけたホッブズ、そしてこれらの思想を過激に全面化し、その結果、世紀のスキャンダルの渦中に投げ込まれてしまったスピノザ―。ドゥルーズ、ラカン、ゲルー、マトゥロンらの諸説を批判的に援用しつつ、独自のまなざしで哲学者たちの言説に取り組んだ著者の考察は、政治、宗教、倫理の根源的な意味を問う読者に、このうえなく新鮮で知的な息吹を与えることだろう。

■著者について
*うえの・おさむ 1951年京都生まれの哲学研究者。フランス語圏の哲学研究、思想史研究に造詣が深く、精神分析や構造主義の成果をとり入れながら、独自の視点で17世紀思想史を再構築する気鋭の研究者。≪Studia Spinozana≫の編集委員を務めるなど、国際的な哲学の舞台でも活躍中。大阪大学助手、山口大学助教授、同教授を経て、2004年4月から大阪大学文学部教授。著書に『スピノザと政治的なもの』(共著、平凡社)、『哲学者たちは授業中』(共著、ナカニシヤ出版)などがあるほか、フランス語、英語による論文も多数発表。



書評・その他
最高の哲学研究書である。スピノザ・ルネサンスの頂点に位置する書物であり、イギリス思想史研究の隆盛にともなって粗製乱造されてきたホッブズ研究を根こそぎにする書物である。スピノザを読むマトゥロン、カントを読むラカン、ヘーゲルを読むジジェク、カテゴリー論を読む郡司-ペギオ-幸夫に匹敵する。文体や措辞も見事であり、哲学に関心のある人には是非読んでほしい。(小泉義之氏=「読書人」 1999.5.21.)

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本書全体の魅力をなしているものは、こうしたいわばポストモダン的なテーマによってスピノザが読み抜かれていることの新鮮さである。そうした著者の試みは、事実、従来のスピノザ解釈のなかではかならずしも注目されてこなかったスピノザの思想の鉱脈に思いがけぬ光をあてることを可能にしている。ただし、そうした本書の魅力とスピノザ解釈への貢献を十分に認めたうえで言うのだが、その魅力と貢献をかたちづくっている当のものが同時に、本書のある狭さをかたちづくっているようにも思える。(桜井直文氏=「スピノザーナ」1, 1999.)

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17世紀哲学の見事な読解・・・(岩崎稔氏=「現代思想」2003.12.)

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