病気のない世界 医療は人類を救えるか
W.B.シュワルツ/渡会圭子訳
[四六判並製/216頁/定価¥2000+税]
現代の医療には、誰もが希望と失望が混在した複雑な想いを寄せているに違いない。われわれは果たしてユートピアへ向かっているのだろうか、あるいは医療そのものを破綻させてしまう方向に向かっているのだろうか。今日、最新の治療技術、医療過誤や医事紛争、病院経営の破綻、医療財政の危機など、医療に関する重大ニュースが報じられない日はほとんどないが、そうしたニュースの本質的な意味は、一般の目には必ずしも十分にはみえてこない。医療に関するテーマには例外なく、医学、政治、経済、倫理、法律などの問題が複雑に絡み合っているからだ。著者は本書において、アメリカが辿った医療改革の軌跡をこの上なく明快な筆致で解説しつつ、将来の医療テクノロジーがもたらす変化、医療制度のさらなる改革の行方を予測する。言い換えれば、本書のテーマは、1950年代から2050年代までの医学界における主な出来事ということにもなる。先端医療、政治経済、倫理・哲学、社会学など、あらゆる領域の動向を見据えながら、医療の根本問題に迫るスリリングな医学的文明論。