精神分裂病概念の源流となった原著論文を明快な日本語で紹介・・・
精神分裂病の概念
精神医学論文集
Hitomi, K. (Ed): Selected Writings
of Eugen Bleuler
オイゲン・ブロイラー
監訳=人見一彦
翻訳=向井泰二郎/笹野京子
★A5変・上製・208頁 ¥4200 1998ISBN4-906502-11-3 C3047
オイゲン・ブロイラーは、クレペリンが確立した早発性痴呆の概念を批判的に継承し、《精神分裂病》の名称を提唱した精神科医として知られている。彼は、フロイトの精神分析にも早くから理解を示し、弟子のユングをフロイトのもとに派遣した。本書に収められた諸論文には、クレペリンの記述精神医学とフロイトの力動精神医学の統合を試みた著者の精神科医としての実践、学者としての思考の足跡が例外なく鮮明に描かれている。《精神分裂病》の名称がはじめて用いられた「早発性痴呆(精神分裂病群)の予後」、アカデミズムからの厳しい批判に曝されていたフロイト学説をいち早く擁護した論文として知られる「精神病の症状論におけるフロイト的機制」、自閉、両価性といった今日では周知の精神病理学的概念を開示した重要論文など、いずれも分裂病論を考える上で歴史的な意義を持ち、現在にも大きな示唆を与える価値を持つものばかりである。精神疾患とはなにか、精神医療とはなにかを考えるための資料的価値の高い論文集。
■ 目 次 ■
早発性痴呆/早期退院/精神病の症状論におけるフロイト的機制/早発性痴呆(精神分裂病群)の予後/分裂病の拒絶症の理論について/道化症候群/自閉的思考/両価性/医学におけるメンデルの法則
訳者注/オイゲン・ブロイラーの主要著作/訳者あとがき/索引
執筆者紹介
オイゲン・ブロイラー (Eugen Bleuler, 1857-1939)
1857年チューリッヒ近郊の農家に生まれる。1897-1927年チューリッヒ大学精神科(ブルクヘルツリ精神病院)第5代教授。クレペリンの早発性痴呆の概念を継承しつつも、連合心理学やフロイトの力動説を早くから取り入れ、精神分裂病の名称を提唱するほか、連合障害、情動障害、自閉、両価性など、多くの重要な精神医学的概念を確立した。著書は『精神医学書』『早発性痴呆または精神分裂病群』『医学における自閉的-無規律的思考とその克服』など。
人見一彦 (ひとみ・かずひこ)
1940年京都に生まれる。1965年神戸医科大学卒業。神戸大学大学院、同文学部哲学科研究生を経て、近畿大学医学部精神科勤務。1998年より同教授。専攻は精神医学、精神病理学。著書は『チューリッヒ学派の分裂病論』『分裂病概念の源流』『分裂病への理解と治療』など多数。
向井泰二郎 (むかい・たいじろう)
1955年大阪に生まれる。1982年近畿大学医学部卒業。1994年カロリンスカ医科大学留学を経て、現在近畿大学医学部精神科講師。専攻は精神医学、精神病理学。
笹野京子 (ささの・きょうこ)
1957年岡山に生まれる。1981年近畿大学医学部卒業。和歌山大学教育学部講師を経て、現在、旭川児童院精神科医長。専攻は児童精神医学。