《精神医学の基盤》POWERMOOK[2018.01.07]

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このシリーズについて 精神医学の意義と技法の本質を根底から考える

近年の精神医学をめぐる情勢の変化には目を見張るものがあります。反精神医学運動が隆盛をきわめ、精神科疾患が社会運動の脈絡のなかで捉えられた時代、力動的精神医学が大きな影響力を駆使した時代、非定型抗精神病薬の登場により脱施設化が精神科医療の大きな課題となった時代、精神科における基礎研究の進歩が注目されはじめた時代、これらのどの時代をみても、診断と治療に加え、精神科臨床においては精神病理学が重要な役割を果たしてきました。しかし、臨床からあまりにも乖離した思弁的な精神病理学の展開や、より実証的な生物学的精神医学の台頭が精神病理学の存在意義を大きく後退させてしまった感は否めません。今日の精神科臨床に求められていることが精神病理学的な観点と生物学的精神医学の観点の融合であろうことに異論の余地はないと思われますが、そうした試みを各論レベルで深化させることは容易ではないと考えられます。本シリーズでは、そうした問題点を最大の関心分野とし、精神医学の基盤としての基礎研究、また臨床医学としての精神病理学を学際的に扱うことを基本方針といたします。
この第1巻の特集への書評を書いてくださった黒木俊秀氏は、(近年海外で注目されている)「Philosophy of Psychiatryに呼応する動きが日本で見当たらないことを不満に思っていたが、ようやく本書にめぐりあって乾きが潤される思いがした」・・・・・・なにしろ、責任編集が、石郷岡純氏と加藤敏氏という、まさか予期せぬ顔ぶれの精神薬理学者と精神病理学のリーダー同士である。」と述べておられます。

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POWERMOOK 《精神医学の基盤》[1]
薬物療法を精神病理学的視点から考える
責任編集=石郷岡純/加藤敏
B5判 230p 4000円+税 ISBN9784906502509

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POWERMOOK 《精神医学の基盤》[2] 
うつ病診療の論理と倫理
責任編集=田島治/張賢徳
B5判 208p 4000円+税 ISBN9784906502516

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POWERMOOK  《精神医学の基盤》[3] 
精神医学におけるスペクトラムの思想
責任編集=村井俊哉/村松太郎
B5判 212p 5000円+税 ISBN9784906502523


主な書評の一部から

総じて、評者は、本書にわが国独特の精神病理学、いや、Philosophy of Psychiatryのよき伝統を感じた。「PowerMook《精神に学の基盤》」はシリーズ化して刊行されるという。今後も続く思索の行方が楽しみである。(精神医学の基盤[1]について) 黒木俊秀氏、精神経誌(2015)117巻7号

全体として、読み応えのある論文が揃っており、一編ずつじっくりと読んでいくことによって、われわれが日常行っている薬物療法の矢以後に、精神病理学という精神医学においてもっとも深遠な分野が屹立していることが見えてくる。若手からベテランにいたるまですべての精神科医にお勧めしたい。(精神医学の基盤[1]について)仙波純一氏、精神医学(2015)第57巻6号

全体は編者2名により「薬物療法の進歩と精神病理学の展開」と題された対談に始まる。この対談では2人のエキスパートが、なれ合いの議論ではなく、対立すべきところは対立して論じ合っている。緊張感を持った対談で、両者の真剣さが印象的である。(精神医学の基盤[2]について)大森哲郎氏、こころの科学

著者と論者は、いずれも当代を代表する論客であり、いずれの論文も読み応えがある。これらを通して、うつ病診療の論理と倫理に関するさまざまな問題が浮かび上がる仕掛けとなっている。(精神医学の基盤[2]について)(平出麻衣子、心と社会 No163, 2016)